1900年、イタリア。この年の7月28日、当時のイタリアの国王であったウンベルト一世は、あるレストランにいた。国王が食事をしていると、どうもさっきから向こうに立っているレストランの主人とやたらと目が合うし、何か顔にも見覚えがあるような気がする。話を聞いてみると、なんと驚くべき事実がわかったのだった。
■ウンベルト1世ともう一人のウンベルト
1900年7月28日
ウンベルト1世(写真)は、北イタリアのモンツァのレストランで、将軍と一緒に、食事をとることになった。実は、翌日主催される競技大会に出席するため、この街を訪れていたのだ。
オーダーを取りにきたレストランの主人を見た瞬間、国王はなぜか、親近感を覚える。
初めて会った気がしないのだ、昔からずっと知っている人のような気がする。
国王とここのレストランのオーナーとは、顔が瓜二つだったという。
「将軍、あの主人をここに呼んでくれ。少し彼と話してみたいんだ。」
やがて、レストランの主人がやってきて、うやうやしく頭を下げる。「君とは、どこかで会ったような気がするんだが。」
「陛下は、鏡で私の顔をごらんになったにちがいありません。わたしはおおぜいの人から、陛下によく似ていると云われます。」
実は、国王自身は、まだ気がついてなかったのだが、このとき、従者すべてが仰天していた。
ウンベルト1世(写真)は、北イタリアのモンツァのレストランで、将軍と一緒に、食事をとることになった。実は、翌日主催される競技大会に出席するため、この街を訪れていたのだ。
オーダーを取りにきたレストランの主人を見た瞬間、国王はなぜか、親近感を覚える。
初めて会った気がしないのだ、昔からずっと知っている人のような気がする。
国王とここのレストランのオーナーとは、顔が瓜二つだったという。
「将軍、あの主人をここに呼んでくれ。少し彼と話してみたいんだ。」
やがて、レストランの主人がやってきて、うやうやしく頭を下げる。「君とは、どこかで会ったような気がするんだが。」
「陛下は、鏡で私の顔をごらんになったにちがいありません。わたしはおおぜいの人から、陛下によく似ていると云われます。」
実は、国王自身は、まだ気がついてなかったのだが、このとき、従者すべてが仰天していた。
■二人の奇妙な一致とは?
(写真:ウンベルト1世のガレリア)
「ああ、そう云えば、予の顔とそっくりだな。」
ここで、はじめて国王は、その事実に気がついた。
「ところで、名前はなんと申すのかな。」
「陛下と同じく、ウンベルトと申します。
1844年3月14日、午前10時30分、この世に生まれた時からの名前です」
「なに、1844年3月14日、午前10時30分だと?
それは、余の生まれた日と、時間まで同じじゃないか!では、生まれた所は?」
「トリノでございます」
「トリノ? 予もあの町の生まれだ。」国王は、すっかり、驚いてしまった。
「それで、もちろん結婚しているだろうね。」
「はい、1866年4月2日に、結婚し、妻はマルガリタと申します」
「予の結婚した日と同じだ。マルガリタというのも、皇后のクリスチャネームと同じだ」
ここまで来ると、もう、不思議としか言いようが無い。
「ときに、その方には、子供はおるのか?」
「ビットリオという息子が、一人おります」
「なんと・・皇太子と、同じ名前だ。」国王は興奮して声をふるわせた。
「ならば、その方がこの商売を始めたのは、いつからかね?」
「はい、1878年1月9日に。このレストランをオープンさせました。」
「それは、余が、イタリア国王になった日だ。」
「今日、ここで君と会ったのは何かの縁かも知れない。私もこの地へ来るたびにこの店に寄らせてもらうよ。今後ともよろしく頼む。」
「いえいえ、私の方こそ、陛下とお話が出来てこんな光栄なことはございません。明日、陛下が来客として出席される競技会には私もぜひ見に行こうかと思っております。」
「では明日また会えるね。その時はまた、ゆっくりと話でも聞かせてくれ。」
そう言って国王はその店を後にし、宿泊先へと向かった。
■二人のウンベルトの最期
そして次の日。国王は競技会には出席したものの、昨日のあの男の姿がいっこうに見あたらない。気になっていたところへ部下のバグリア将軍が走って国王の元へとやって来た。
「陛下!実は急な話なのですが、昨日会ったあの男は亡くなったということです!何でも銃の手入れをしていた時に銃が暴発して・・自殺も疑いもあるということです!」
「何だって?! あの男が死んだって? 昨日会ったばかりだというのに・・!」
突然のことに国王はがっかりした様子だった。
「彼の葬儀には私も出席する。それと、私の名前で花輪も送っておいてくれ。」
「何だって?! あの男が死んだって? 昨日会ったばかりだというのに・・!」
突然のことに国王はがっかりした様子だった。
「彼の葬儀には私も出席する。それと、私の名前で花輪も送っておいてくれ。」
バグリア将軍に、そう言い終わるか言い終わらないかのうちに、突然場内に銃声が響いた。
暗殺者が国王を狙って放った銃声の音である。
弾丸は国王の心臓を直撃し・・ほとんど即死状態だった。
弾丸は国王の心臓を直撃し・・ほとんど即死状態だった。
何から何までそっくりだったレストランの主人と国王は死に方も死んだ日まで同じになってしまったのだ。
■ウンベルト1世の最期
1900年7月29日の午後、モンツァを訪問中にイタリア系アメリカ人のアナーキスト政治家ガエタノ・ブレーシにより銃撃された。(写真・暗殺事件の現場)
4発の銃弾を身に受けたウンベルト1世は倒れ、そのまま息を引き取った。警察に拘束されたガエタノは「虐殺への報復だ」と叫んだという。ガエタノは先の例もあって死罪ではなく終身刑とされたが、1年後に独房内で何者かによって殺害されたという。
果たしてこの出会いはなんだったのか?