アガサ・クリスティの世界一周旅行の経験が散りばめられた冒険ものの謎解き小説「茶色の服の男」


■概要

冒険ものに属する作品であり、最も有名な某作品のトリックを先取りして試している点で、謎解き小説としても注目される作品で、1924年に発表されたアガサ・クリスティの長編推理小説。本作で通算4作品目となる「茶色の服の男」は、33歳のときに大英帝国博覧会(英語版)の宣伝使節の夫に同行して世界一周旅行をしており、主人公のアンの旅行の描写はその経験を基に描かれている。

■書籍について


「茶色の服の男」(原題:The Man in the Brown Suit)
1923年にイギリスで初版発行。レイス大佐初登場作品で、アガサ・クリスティ作品として4作目にあたる。

■本の内容


考古学者の父を亡くして間もないアンは、ロンドンの地下鉄で奇妙な事件に遭遇する。男が何者かに驚いて転落死し、現場に居あわせた怪しげな医者が暗号めいたメモを残して行方をくらましたのだ。好奇心に駆られたアンは、謎を追って単身南アフリカ行きの客船に飛び乗った……ミステリの女王による波瀾万丈の冒険譚。

■作品にまつわるトリビア

アガサ・クリスティの長編作品中で、主犯が生きたまま自らの手で逃げおおせることに成功しているのは本書「茶色の服の男」と「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」の2作品のみ。
英国のミステリ作家・評論家として有名なジュリアン・シモンズは、本作品をクリスティのベスト12に挙げている。
アガサ・クリスティの自伝にて「これは、わたしがよく知っている実在の人物を作中へ取り入れようとした唯一のケースだが、成功とはいいがたかった」と本作品の出来には消極的。
また、先にも述べた通り、アガサ・クリスティの世界一周旅行の経験を随所に散りばめており、主人公アンはアガサ・クリスティの分身という説もある。
本書のトリックの先取りは、ディクスン・カーによりEQMM誌の書評欄で指摘されている。


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