「フーディーニの暗号」は解かれたのか?伝説の奇術師の謎のメッセージとは

2019/09/11

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1月9日
伝説の奇術師ハリー・フーディーニは生前に愛する妻と、自分たちだけが知る二人だけの暗号を決めていた。自分の死後、そのメッセージを妻に正確に伝えられる霊媒師がいれば、その霊媒師は本物だと証明され、また霊界の存在も証明できるとされたのだ。
そして、フーディーニの死後、完全にその暗号を解き明かした霊媒師がいた。

その交霊会の翌日1929年1月9日に、妻のベスは事実の正当性を認める宣誓供述書に署名し、新聞社に報道させた。こうしてフーディニの暗号は破られ、霊界の存在は証明されたのだ。
ところが、この事件には大どんでん返しが待っていた。








天才マジシャン「脱出王」:ハリー・フーディーニ




「現在もアメリカで最も有名な奇術師」と呼ばれ奇術師の代名詞ともなったハリー・フーディーニ。
20世紀前半、マジックの世界だけでなくボードビル全体を見渡しても、圧倒的な人気があり、マジシャンとしての人気・知名度はおそらく歴代No.1であったといわれている。
脱出術を得意とし、各国の警察の留置場や刑務所に収監されての手錠外しによる脱出や、また凍った運河やミルク缶からの脱出を行い、大きな話題となった。「フーディーニに脱出できない所は無い」「不死身の男」「脱出王」と大規模に宣伝するなど、マスコミを利用した売り込み技術はずば抜けた才能があり、当時のアメリカのトップスターとなった。


母の死から始まった本物の霊媒師探し



フーディーニは1874年3月24日ハンガリー・ブタペスト生まれで本名はエーリッヒ・ワイス。子供時代に両親と共にアメリカに移住した。その愛する母がなくなったことによって、フーディーニはスピリチュアリズムに傾倒していった。
(写真:左・フーディーニの妻ベス、中央・フーディーニの母セシリア、右・フーディーニ)
当時、スピリチュアリズムを擁護する立場に立っていたあのシャーロック・ホームズの生みの親
コナン・ドイルとも一時は親交があったとされる。(後述)


当時アメリカでブームになっていたスピリチュアリズム(心霊主義)は、主に交霊会を行い、死んだ人の霊を呼び出し、交信するというものだった。
フーディーニはなくなった愛する母親セシリアと交信するために本物の霊媒師を探すことにしたのだ。
また、それには「本物」と判断するだけの根拠があった。
というのも、フーディニは母の生前、母との間である「合い言葉」を決めており、その合い言葉を言うことのできる霊媒師を探し求めていたのだ。


しかし、有名な霊媒師に会っても、どれも母との合言葉を言うことができず、みんなインチキであると気づいてしまう。
フーディーニが書き残した手紙などによると、彼は死後の生命というものを信じていたといわれている。しかし、人を騙して食いものにするニセ霊媒師に対しては強い怒りを感じていた。そこで、奇術師としての知識と洞察力からそれらがトリックだと気付き、これを暴くことに熱心に取り組み、「サイキック・ハンター」という異名をとるまでの存在になっていくのだ。
フーディーニが暴いた霊媒師は数百人にのぼると言われ、全盛期の頃はアメリカ全土だけでなく、フランスのパリでも抗議集会が開かれたという。



コナン・ドイルとの親交


一時フーディーニと親交のあったコナン・ドイルは、当時心霊主義者としても有名で、その熱心な伝道活動から「心霊主義の聖パウロ」とも呼ばれていた。しかし名探偵シャーロック・ホームズの生みの親のわりには、心霊現象に関しては軽信してしまう度合いがひどく、かなり懐疑精神の欠如した人物でもあった。


(シャーロック・ホームズの生みの親 アーサー・コナン・ドイル)
1922年の5月に、フーディーニが幼稚園児でも演じることができる「親指の関節を手の指から取り外し、またくっつけたように見せる」マジックを同乗したタクシーの中で披露したところ、本気で信じてしまったという。
こういったことから、フーディニはドイルについて、「マジックが人間の手管であることを全然教わったことがないのだから、彼を騙して信頼を勝ち取るなんて赤子の手をひねるように簡単なことだ」と書き残している。

「フーディーニの暗号」と霊界の存在


彼は自分の死後も同じような秘策を施すことにした。
妻のベス(写真左)との間で「暗号」を決めておき、自らの死後に、その暗号を使って霊界からメッセージを送ることにしたのである。暗号は二人だけが知る秘密のもので、この暗号を霊媒が伝えられれば「本物」だと認められる仕組みだった。霊界の存在も証明できる。


今日まで、この暗号、および母との合い言葉を伝えることができた霊媒は一人もいなかったと言われていたが、実はこのフーディニの暗号と合い言葉を伝えることができた人物は、一人だけ存在していた。
それがアメリカの霊媒アーサー・フォードである。彼は1928年に、まずはフーディニが生前に母との間で交わした合言葉を伝えた。それは世界中の霊媒が伝えることができなかった言葉であり、フーディニが探し求めていた言葉だった。
“FORGIVE” ―許して―
この言葉をフォードが交霊会で霊界から受け取ったのは1928年2月8日。その翌日には、フーディニの妻ベスにこの合い言葉を伝えている。彼女は非常に驚き、合言葉が本物であることを新聞に公開した。



さらにフーディニとベスとの間で交わされた「暗号」もフォードは伝えている。1928年11月の夜、ついに「フーディニの暗号」の最初のメッセージが伝えられた。
「はじめの語は “ROSABELL” で、それがその他の言葉を解くことになるだろう」
この言葉を聞いたベスは、またもや驚いた。彼女が結婚指輪を外すと、そこには
「ROSABELL」の文字が刻まれていたからだ。この言葉が指輪の内側に刻まれていることはフーディニとベスしか知らないことだった。さらにこれが暗号を解いたあとの通信文の一部になるということは二人以外は誰も知らないことだった。
フォードはさらにメッセージを伝える。「さて、 ROSABELLE以外の九つの言葉は、私たちの暗号では一語の綴りとなる」そう言うと彼は、交霊会で次の九つの言葉を伝えた。
「ANSWER  TELL  PRAY. ANSWER  LOOK  
TELL  ANSWER. ANSWER  TELL」
一見すると意味不明の言葉である。しかしフォードはこの九つの言葉の暗号を見事に解いてみせた。解読された言葉は「BELIEVE」(ビリーブ)。最初に伝えられた「ROSABELLE」と合わせるとフーディニの霊界からのメッセージは次の言葉となる。
Rosabelle believe ―ロザベル、信じなさい―


二人だけしか知らない暗号解読法でフォードは暗号を解いた。そしてフーディニの霊界からのメッセージを伝えたのである。この交霊会の翌日、1929年1月9日に、ベスは事実の正当性を認める宣誓供述書に署名し、新聞社に報道させた。


暗号解読の真相


ところが、この事件には続きがあった。
フーディーニの母の合言葉は、妻ベスがあるインタビューでほとんど言ってしまっていたこと、また「フーディーニの暗号」に関しては、フーディーニの伝記にある暗号の解読法を組み合わせれば解けることがわかったのだ。
つまり、霊媒師であるアーサー・フォードは事前に確信をもってこれらの言葉を導くことができたのだ。妻ベスは宣誓供述書を撤回し、それ以降フーディーニからの「霊界のメッセージ」を二度と聞けることはなかった。
脱出王フーディーニも、霊界からの脱出は不可能だったのである。


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