聖書とシェイクスピアの次に読まれている!?「ミステリの女王」アガサ・クリスティのデビュー作『スタイルズ荘の怪事件』

■概要

『スタイルズ荘の怪事件』は、1920年に発表されたアガサ・クリスティの長編推理小説で、不朽の名探偵ポワロの出発点となった著者の記念すべきデビュー作。彼女が推理小説を書くきっかけとなったのは、 姉から「あなたには探偵小説を書けない」と言われた事がきっかけだったと言われている。
クリスティは1916年に本作を書き上げ、複数の出版社へ原稿を送ったが採用されなかった。彼女自身、応募の事実を忘れた頃にボドリー・ヘッド社のジョン・レーンに見出され、最後の章を書き直して1920年に出版された。

■書籍について

『スタイルズ荘の怪事件』初版発行:1920年10月

■本の内容

旧友の招きでスタイルズ荘を訪れたヘイスティングズは、到着早々事件に巻き込まれた。屋敷の女主人が毒殺されたのだ。難事件調査に乗り出したのは、ヘイスティングズの親友で、ベルギーから亡命して間もない、エルキュール・ポアロだった…。

■作品にまつわるトリビア

彼女の出版社代表ジョン・レーンの強い主張で、「スタイルズ荘の怪事件(The Mysterious Affair at Styles)」の最後の場面を、法廷からスタイルズ荘の居間に移された。


■アガサ・クリスティについて

アガサ・クリスティのデビュー作として名高い本書だが、アガサ・クリスティが初めて小説を書いたのは18歳の時と言われている。
1908年 18歳のとき、アガサがインフルエンザからの回復期で退屈していると、母から短い小説を書くように勧められ、 「美女の家」という約30ページの物語を書いて祖父ナサニエル・ミラーの名前でいくつかの雑誌社に送るが、採用されなかった。
さらに、翌年、1909年 19歳 長編小説「砂漠の雪」を書き、隣人の作家イーデン・フィルポッツに批評を請う。 ガストン・ルルーの推理小説『黄色い部屋の秘密』に触発されて、短編小説「幻影」と「あまりに気ままなために」を書き、フィルポッツに批評を請うと、アガサの才能に折り紙を付けてくれた。

その後、アガサは23歳で最初の夫・アーチボルト・クリスティ少尉と出会い結婚。結婚後、夫はフランス戦線などに出陣していたため、アガサはトーキーの陸軍病院でボランティアの看護婦となり、初めは看護助手として、後に薬局の薬剤師として働き(~1918年)、薬局勤務を通して毒薬の知識を得る。
この知識が、のちの推理小説を書く際に多いに役に立ったと言われている。

1916年 26歳 『スタイルズ荘の怪事件』を脱稿し、名探偵エルキュール・ポアロを生み出す。複数の出版社に送るが、採用されなかった。

その4年後の1920年。ようやく、「スタイルズ荘の怪事件」が、ボドリー・ヘッド社の編集者ジョン・レーンに見出され最後の章を書きなおして、デビュー作として出版された。(アメリカでの刊行が1920年だが
イギリスでの刊行年は1921年となっている。)当時アガサは30歳。
本書はアガサの母に捧げられ、初版約2000部を売り切るが、収入は僅か25ポンドだったと言われている。

本作は薬剤師の助手時代の経験が生かされており、後にクリスティは読者の感想の中で最も嬉しいと感じたのは調剤学の専門誌から薬物に関する知識を褒められたことだったと述べている。


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