17世紀まで起源がさかのぼれる英国で最も古い王立劇場ドルリー・レーン劇場。建物は4度改築されており、現存の白亜の建物は19世紀の初めに建てられたもので、すでに200年近い歴史を持っている。
しかし、この劇場をもっとも有名にしているのは、世界でも有数の「幽霊の出る劇場」だからだった。
■「灰色の服の男」の幽霊
ロンドンのドルリー・レイン劇場には、18世紀の服装のような三角帽子の下から髪粉(化粧品)を振りかけた髪を覗かせ、ドレス・ジャケットを着て、袖なしマントをはおり、乗馬靴をはき、腰に剣を帯びている「灰色の服を着た男」の亡霊が出るといわれている。
一度だけ150人の観客の前に現れたが、多くはリハーサルの最中に出現するという。
D列のおしまいの席に現れ、そこから後ろの通路を通ってロイヤル・ボックス
の壁の中へと消えるパターン。
この男の姿が現れると、そのリハーサル中の興行が大当たりすることが多く、俳優たちはこの亡霊の出現に脅えるどころか喜ぶようになっているという。
何人かの俳優は舞台の上で、より効果的な位置に自分を導く手の気配を感じたという
し、本番中にも、俳優が自分で決めた位置に立つと「それでよしよし」と優しく背中を叩かれたりもしたという。
し、本番中にも、俳優が自分で決めた位置に立つと「それでよしよし」と優しく背中を叩かれたりもしたという。
さらに、舞台初日に「灰色の服の男」が現れた演目は成功するというジンクスもあるとのこと。また一説には灰色のコートを着たこの幽霊はかなりの美男子だそうで、劇場内の4列目の3番の座席に座っている姿をリハーサル中などにたびたび目撃されているという。
■「灰色の服の男」の正体は?
この「灰色の服の男」の幽霊の正体としてもっとも信じられている説がある。
1848年に、この劇場の修理工事の最中、この灰色の男の亡霊が壁の中に消えていく箇所の裏側で、通路の壁に塗りこめられている長く未使用のままだった小部屋が発見された。
その小部屋の中から、助骨に短刀の刺さった埃だらけの白骨体が発見されたというのだ。
伝説では、灰色の服を着た男は、このナイフを刺されて殺された男の幽霊なのではないかと言われているが、「灰色の服の男」とこの白骨体との関係はまだ明らかにはされていない。
■さらに俳優の幽霊も
「灰色の服の男」の幽霊のほかにも、この劇場には俳優チャールズ・マックリンとコメディアン・ジョー・グリマルディの幽霊も出るといわれている。
マックリンは舞台裏に現れ、廊下をうろつきまわるという。
この場所は、1735年にかつらのことで言い争いをして、仲間の俳優トーマス・ホーラムを殺めた場所だと言われている。
「くそっ、このごろつき、げす野郎、人でなし!」と叫んで、持っていたステッキをホーラムの顔に突きつけ、彼の左目に突き刺したという。
また、コメディアン・ジョー・グリマルディの幽霊は、人助けをする幽霊で、うわさでは一度とならず神経質になっている役者をステージの上で巧みに誘導したといわれている。