アメリカ国防総省(ペンタゴン)とCIAによるマインド・コントロールの研究は、『ニューヨーク・タイムズ』(1977年8月2日付)にスッパ抜かれるまで、関係者を除いて誰も知らず、極秘のうちに行なわれてきた。作戦名は「MKウルトラ」。「マインドコントロールの効果を立証するための実験」とされた驚くべき実験の内容とは?
■ナチスからアメリカ軍へ~「ペーパークリップ作戦」
第二次世界大戦中、ナチスの科学者たちは、収容所の囚人をモルモットにした自白剤の「メスカリン」などの薬品投与実験を行なっていた。
これらの研究結果は、当時のナチスが進めていたロケット・エンジンなどの研究資料とともに、戦後ドイツを占領したアメリカ軍に回収されたものだった。
1946年から1955年までに数千人がアメリカに入国した。そのうちの半分、あるいは80%が元ナチか元SSであったとも言われている。
■「Project MK-ULTRA(MK作戦)」とは?
戦後、ハーマン・P・シュワン博士をはじめとする元ナチスの科学者たちは、アメリカのメリーランド州のエッジランド兵器庫や基地などで、アメリカ軍人を対象に実施された陸軍・CIA合同の「心理化学実験」に関わったという。
この「MK作戦」とは、アメリカ中央情報局(CIA)科学技術本部が極秘裏に実施していた洗脳実験のコードネームのこと。
この計画は、リチャード・ヘルムズの勧めにしたがってCIA長官アレン・ダレスが許可を下したが、ヘルムズ自身が後にCIA長官になった。
アメリカの国民を被験者として1950年代初頭から少なくとも1960年代末まで行われていたとされ、1973年にCIA長官になっていたリチャード・ヘルムズが関連文書の破棄を命じたものの、辛うじて残されていた数枚の文書が1975年、アメリカ連邦議会において初公開された。
「タブン」 「サリン」 「ソマン」といったナチスの致死化学物質を含む神経ガス、それに「LSD」を含む精神化学薬品類が何も知らぬ志願兵にテストされ、これによって死亡した者や、生涯不具になった者までいる。
この実験の最初の犠牲者となったのは、自ら人体実験を志願したジョージ・ドナルド大佐で、彼は「LSD」を用いたマインド・コントロール実験の最中、死の欲望に駆られ、部屋でピストル自殺してしまったのである。
また、別の被験者、チャイフィン軍曹は、「押さえがたい自殺願望が起こって何度も銃を手にしたが、妻に制止されてことなきを得た」と証言している。
■その後
MK作戦の実態は、『ニューヨーク・タイムズ』(1977年8月2日付)にスッパ抜かれた。
同紙は、洗脳の研究機関として「ゲシクター医学研究基金」、「人間生態学研究協会」、「ジョージア・メーシー・ジュニア基金」、「マギル大学精神医学研究所」をあげている。
そして過去25年間に2400万ドルもの巨額の資金が投入され、数万人もの囚人や精神病院の患者がモルモットにされたと報道している。
『USニューズ&ワールド・レポート』誌の ショッキングな記事の内容は、日本の読売新聞(写真)でも報道された。
「MKウルトラ」実験に関与した、元海軍士官は次のように語っている。
「ペイン(苦痛)、ドラッグ(薬品)、ヒプノシス(催眠術)は恐るべき『戦争兵器』であり、社会を支配する目的では原爆よりも効果的であろう。これは誇張ではない。
スパイ活動におけるこの種の催眠術利用は非常に広範囲に行なわれており、人々がこれについて警戒する必要があると気付く時期はとうの昔に過ぎている。」